2014/10/15

グルスキーの風景


ニュー・トポグラフィクスの写真家として給水塔や溶鉱炉などドイツ近代の産業遺産を取り続けたベルント=ヒラ・ベッヒャー(Bernd and Hilla Becher, 1931-) 夫妻に師事したアンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky,1952-)。精緻な空間描写はベッヒャー派の伝統だが、画面をデジタル処理して現実世界と画像との鏡像関係を打ち崩すやり方には師匠のベッヒャー夫妻も抵抗を感じているようだ。

いまや国際的に高い評価を受け、そのプリントが驚くような価格で流通するグルスキーにとって、その風景写真は自らのヴィジョンをあますところなく提示するための媒体ということなのだろう。
かつて東京証券取引所で撮影された写真が転機となり、その後シカゴ゙証券取引所ほかさまざまな場所を撮影してきた。たとえばシカゴ証券取引所の風景は、人とコンピュータで埋め尽くされ、それはさながらネオンサインの氾濫かサイバースペースを思わせる。

96年に発表した『ライン川』になると、文字通りライン川を真横から撮影し、その水面と両土手の接点が不自然なまでに直線となって、非日常的な風景を提示している。深川雅文はここにアンドレアス・グルスキーの「直線や矩形」への拘りを指摘し、それらが現実世界を形作っていることをより明確に打ちだすために、デジタル加工が必要だったと分析している(「現代写真のリアリティ」より)。

1955年ドイツのライプチヒ生まれ。父親は商業カメラマン、ドイツ有数の写真学校フォルクワンクシューレで学び、さらにアンセルム・キーファーやゲハルト・リヒターら輩出したデュッセルドルフ美術アカデミーを経て、ベッヒャー夫妻に師事したという写真界のエリート。冷戦崩壊以降、空間の捉え方までがずいぶんと変わってきたように感じるが、とりわけドイツでの動きが活発なのは、やはりこの国が背負っている時代の重みだろうか。

■写真集
   

  

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