2014/02/13

シュタイナート 1: 主観主義写真

戦後のドイツを考えると、歴史を見つめる眼差しの冷徹さに日本との歩みの違いを感じる。その冷徹さとは、記録性を重視した客観というよりも、むしろ感じていることを臆することなく表現するという強さ、厳しさといったほうがいいだろう。


こうした負の歴史への対応は、集団主義に甘んじるか、あるいは個人の感覚に今一度立ち返っていこうとするのかという価値観にも現われているのかもしれない。たとえば絵画や写真はナチスによって世論操作のためのプロパガンダに用いられ、個人の表現の器であることを放棄してきた面がある。敗戦後、その不幸な歴史を背負いながら、ドイツの写真界に登場したのがオットー・シュタイナート (Otto Steinert, 1915-78) だ。

シュタイナートの提唱した「主観主義写真」(subjective photography) は、アマチュアに一部のプロを巻き込んで展開されることになる。「対象の選択と、それを自然から分離させること」というシュタイナートの言葉は、自明であった世界を打ち壊し、あるがままに見つめなおそうという姿勢が現れている。それは20世紀に登場した現象学の立場に、さらには実存主義というものをどこか思わせないではない。

その名前はもともと、シュタイナートが地元のザールブリュッケンで組織した写真展のタイトルだった。そこでモロリ=ナギやブラッサイ、ロベール・ドアノーらの写真が紹介され、それまで主流だったリアリズムの写真、いいかえれば客観的な機械の目という世界を一蹴し、個人の感覚と結ばれた写真世界を提案した。 (つづく)

■関連本
Otto Steinert: Parisian Shapes

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