2014/01/21

エリオット・ポーターの色彩



どこかの庭先だろうか。低い塀に腰かけ、大判カメラを抱えている青年の写真が残っている。その眼差しはどこか科学者を思わせるのものだが、それはこの写真家のハーバード大学医学部卒業という経歴を知っているからだけではない。あらためて眺めてみても、理知的な輝きをそこに感じることができる。

エリオット・ポーター(Eliot Porter,1901-90) のネイチャー写真は、その美しい色彩が眼をひく。と同時に、自然を静かに眺めていこうとするクールな視線に出会うことができる。
まずその色彩についていえば、これは画像の発色を染料に置き換えるダイ・トランスファーという技法によるもので、カラープリントの退色を防ぐなど耐久性にも優れている。この技法によるポーターのネイチャー写真は、つややかな官能性さえたたえている。

ポーターは1901年にイリノイ州に生まれ、ハーバード大学医学部を卒業した頃から写真に興味を持ち始めた。それでも、母校で細菌学や生化学を10年以上に渡って教え続けている。自然科学への興味は父の影響が強かったといわれる。転機が訪れたのは大御所アルフレッド・スティーグリッツ(1864-1946) との出会いだろう。39年にニューヨークで彼の主催するギャラリー「291」で展覧会を開催。アンセル・アダムス(1902-1984) らの賞賛を受け、写真家になる決意を固めた。

当時はしかし、ポーターの撮る写真はモノクロだった。カラーに転向したのは、撮影した鳥の種類が識別できないという指摘からだったという。こうして1940年代にはカラー写真に取り組み、そのパイオニアとなる。自然の色彩をみごとに再現しているとともに、近距離から中距離の画角を多用するポーターの写真には、対象との微妙な距離を保つ姿勢が感じられる。その微妙な距離感覚のなかで、自然の色彩や造形に魅せられるうちに、作品世界に取り込まれていく。
1962年には著書『森の生活』で知られる思想家ヘンリー・ソロー(Henry David Thoreau,1817-62)の文章を添えた写真集『In Wildness, Is The Preservation Of The World』を発表している。

■写真集
The Color of Wildness
Eliot Porter's Southwest

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