2013/02/08

べアテ・グーチョウのデジタル写真


デジタル化は虚実の境をきわめて曖昧なものにしている。ドイツの写真家ベアテ・グーチョウ(Beate Gutschow,1970-) の撮影する風景もまた、デジタル合成によってシームレスな仮想空間を平面上に出現させている。


木や人物、建物、水、光、陰などの素材を数十枚の写真から集めて、それを再構成するという行為。その表現様式に違和感を覚える場合もあるでだろうが、画家が風景を頭のなかで再構成することは至極当然のことだ。いいかえれば、合成を否定した時点で、歴史に残る膨大な作品群もまた否定されてしまうというジレンマに陥ることになる。にもかかわらず、デジタルという修飾語がついた時点で違和感を覚えるのは、デジタル技術への抵抗感や偏見が存在するからだろう。

この女性写真家のしたたかな表現行為にも、おそらくはこうした表現への問題意識、あるいは挑戦が秘められている。
彼女はドイツの宗教都市マインツに生まれ、ハンブルク美術学校でティルマンスらに学んだ。写真以外にも絵やヴィデオにも関心を寄せていたようだ。
やがてデジタル合成写真による田園風景シリーズで評価を得た。それらは19世紀イギリスの風景画家ジョン・コンスタブルらの影響が指摘されている。

さて、彼女の作品に現われた風景が本物かどうか、あるいは本物らしいかどうかは、結局のところどちらでもいいのだろう。それよりもむしろ、私はその風景が空虚感と秘められた暴力性のようなものが気になる。田園風景を作りだしながら、その自然の風景が清々しさとは異なる気配を発し続けている。そうした作品のニュアンスをもっと素直に感じとりたいものだ。   20060403

■写真集
Beate Gutschow: LS/S
Beate Gutschow: S
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