2012/07/15

ジェリー・ウエルスマンの転置


ロートレアモンのいう「手術台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会い」は、デペイズマン(depaysement) の例としてしばしばとりあげられる。デペイズマン、転置とも訳されるこの言葉は、故郷からの追放あるいは本来あるべき場所から移動させることで生じる違和感のようなものをさし、シュルレアリストたちが制作に多用した概念だ。
ジェリー・ウエルスマン(Jerry Uelsmann,1934-)の写真も、このデペイズマンが用いられる。
自然の風景のなかに、異種イメージである人工物もしくは人間そのものが配置され、その奇妙な空間構成によって見る者に価値の転換をはかっている。たとえば森の小道にある大きな唇、雲のうえに輪を描くように置かれた椅子、あるいは水面に変化した天空のしたにある干からびた荒地などのイメージだ。

たとえていうならば、エルンストやマグリッドの絵画が、モノクロ写真のなかで一層無気味に再現し、見えないはずの現実の裏側にある現実を照射しているかのようだ。

ウエルスマンは米ミシンガン州デトロイトの生まれ。ロチェスター工科大学やインディアナ大学で写真及び視覚デザインなどを学び、フロリダ大学で教職につき、引退したいまも同州ゲインズビルに暮らし写真を撮り続けている。その写真には雲、樹木、水、舟などのイメージが多用され、流動あるいは浮遊の感覚、それもかなりの規模をもった流れがそこに映しだされている。それがヨーロッパではなく、アメリカ的な、ウエルスマンのシュルレアリスムなのだろう。

■写真集


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