2011/12/03

北代省三の風

 リアリズム写真を中心に語られることの多い1950年代の日本写真界にあって、一方では前衛芸術運動の高まりとともに、さまざまなタイプの写真家が活動を展開していた。瀧口修造が名づけ親となり、岡本太郎の鬼子などともいわれた総合芸術集団「実験工房」(1951-57)の中心的存在だった北代省三(1921-2001)は、まさにそのひとりといる。

瀧口修造が名をつけ親となり51年に結成された「実験工房」は、写真家であり美術家でもあった北代のほか、山口勝弘や武満徹、駒井哲郎らが名を連ねている。顔ぶれを見てわかるように、インターメディア的な活動を展開したグループだ。アートとテクノロージー、あるいは詩情と科学の融合として、その活動を捉えることもできるだろう。こうした特徴はバウハウスを想起させないではない。

さて、従来はモビールと抽象絵画の作家として評価の高かった北代省三だが、その写真作品もまた独創的で、興味深いものがある。それらはいかにもクールで、同時になんともいえない詩情を孕んでいる。
作品に数多く登場する被写体としては、樹木と女性があげられるだろう。モノの形態あるいは造形といったものに惹かれた北代らしく、樹木は裸木となって複雑に絡みあう枝、あるいはその影を数多く撮影している。女性の場合も、その身体が描きだす線や形の面白さ、あるいは運動という機能を写し撮ろうとしたようだ。
いずれも生命あるものを被写体としつつ、まるでそれらをモノのように扱っている点が特徴的だ。ある意味でモノに狂い、生命あるものさえもモノのように撮ろうとしたのだが、その画面から漂ってくるのは硬さではなく“風”の気配だ。それは画面のなかに設けられら空間を吹き抜けている。なんともあなどれない50年代ではないか。(050111)



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