2010/09/22

マルティーヌ・フランク、風景としての人 2

マルティーヌ・フランクは美術の勉強を終えると、パリで写真家ジョン・ミリらの助手をする。しかし、どうもじっとはしていられない。行動派である。63年からアジアを旅して写真を撮り始める。まだ25歳だ。65年にフリーランスになると、欧米の雑誌に作品を発表するようになった。

70年には写真家集団マグナム創設者のひとりだったブレッソンと結婚。年の差は30だった。その後、フォトエージェンシーを設立し、80年にマグナムの準会員となり、83年に正会員として迎えられている。
彼女のもっとも有名な写真は、アラン・カペイイェールが設計したスイミング・プールを撮った76年の作品だろう。構図の面白さが、洒落たヨーローッパ的雰囲気を醸している。風景写真には独特のセンスを発揮した。
それは人物を撮っても生かされる。対象そのものへぐいぐい迫るというのではなく、ちょっとしたウィットをもって風景のなかに人物を連れだすという感じだ。たとえばソファに腰かけているフーコーは、口もとの右手や背後の本棚とともにあるシーンに溶け込んでいる。モノクロームだが、写真は不思議な饒舌さを持っている。

そんなかかで、フランクの撮った人物たちの視線に目がいく。どこかはにかんでいるような、あるいは懐疑的にこちらを、つまり彼女を見つめる眼差しが多い。フランクがあえてその一枚を選んだのは間違いない。被写体となっているのは画家や写真家、俳優などの表現者で、その多くが世界的な著名人だ。しかし、そこに浮かびあがっているのは自信に満ちた人間ではなく、ごく普通の人という印象だ。彼らのやや不安げな眼差し。まるで自らが創り得たもの以外に、なにかをフランクに訴えたかったとでもいうよに。 (了)



Women / Femmes
Martine Franck (著)
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