2010/07/18

ボルツ、場所の美学とその後 1


「ニュー・トポグラフィクス」の写真家として1970年代に登場したルイス・ボルツ(Lewis Baltz,1945-)は、当初からインダストリアルな空間に関心があった。処女写真集『ニューインダストリアル・パークス』という名前からしてその傾向はうかがえる。場所性を排除し、冷たい空間を撮影の対象に選んだともいえる。ただし当初は記憶の痕跡にも彼はとどまっていた。正確にいえば、両者の境界に視線が向けられたのだが、急速に無味乾燥な物理的「空間」へと傾いていく。


順を追って話そう。ルイス・ボルツは1945年に米カリフォルニア州ニューポートビーチで生まれた。69年サンフランシスコ美術大学を卒業し、クレアモント大学で美術修士号を取得している。その後、自ら「反―美学」を提唱し、荒涼とした空間を淡々と、まるで科学者のような冷徹さで写し撮ってゆく。彼の足跡を追ってみよう。

前出の写真集を出版したのは1974年、29歳のときだ。カリフォルニア州アーバイン近郊の新興工業団地を撮影した記録で、ボルツの視線は都市開発の最先端に向けられている。その空間は、既存のものとはまったく異なる論理によって組み替えられたものだ。いいかえれば、場所の履歴がみごとに剥奪されている。ボルスはこう書いている。「パンティーストッキングが作られているのか、大量殺人兵器が作られているのかわかりはしない」と。

時代はベトナム戦争末期だ。西海岸で反戦運動を眼にしていたボルツに、時代の空気が影響しなかったはずはない。しかし、その視線は告発を目的にしてはない。以前の写真家なら眼もくれなかった打ち捨てられた風景に、美を見いだしている。絶望を内包した美学だ。 (つづく)









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2 件のコメント:

  1. 初めまして。旧art-shoreから拝見しておりました。また、知らないアーティストと出会う場所が出来て、嬉しいです。ルイス・ボルツの被写体へのまなざしはとても興味深いです。(つづく)楽しみにしております。

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  2. take氏 さん はじめまして コメントありがとうございます。
    ニュートポグラフィクスの写真家たちは、おもしろいですね。
    サイト、見せていただきました。とても興味深い写真群で、思わずbookmark。楽しみにしています。

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